4.日常生活で注意すべきことは?

活動性を高めるための工夫

(1)生活リハビリ

1.日常生活の中で運動や訓練を上手に取り入れましょう

    本サイトを読み進んでいくと、第2、3章で紹介している運動は日常生活の動作との関連が強く、生活そのものが運動療法につながっていることが判ってきます。「運動・訓練」という言葉にとらわれず毎日の生活に自然に取り入れることで、運動療法を身近なものにできるのではないでしょうか。本サイトで紹介している運動は、日常生活の動作に共通するものがたくさんあり、ほんの少し運動に対する意識を持つことにより、次のように生活の中へ導入できそうです。

 

2.起床時、入浴時、そして就寝前に

    朝、目覚めたら、布団の上で足首や膝などの関節を痛みのない範囲で少しずつ動かして慣らしていきましょう。張り切ってするのではなく、ゆっくりと身体を目覚めさせていく感じで行ってみて下さい。血友病性関節症が進行している場合、朝のこわばりを感じることがありますので、そのような症状がある方は決して無理をしないように気をつけて下さい。

 

   入浴中も、バスタブの中で足首や膝をゆっくり動かしたり、肘関節の運動を行ったりしましょう。身体を洗ったり拭いたりする際には、肩のストレッチの運動ができます。

 

   夜、就寝前も、ベッドや布団の上で膝や足首の関節を動かす運動をするのに適しています。

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3.パソコン(ゲーム)やデスクワークの合間に

   机やパソコン(ゲーム)に向かっている時の姿勢は、肘が曲がり、肩は固定された状態です。パソコンの画面に熱中すると、長時間同じ姿勢をとることになりがちです。そこで、本サイトで紹介しているような、肘、肩関節を動かす運動などを20分間隔で取り入れて、同じ姿勢をとり続けないよう配慮することが大切です。特にお子さんの場合は出血を起こして安静を要する時期、パソコンゲームは良い遊び相手になってくれますが、出血が落ち着いた後も肘、膝を曲げた姿勢でゲームに熱中し続けることのないよう、周囲の大人が気をつけてあげましょう。

 

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   学校や職場でも、休憩時間やデスクワークの合間に大きく伸びをするような動作は、肩関節の効果的な運動になります。授業中や椅子に座ったまま仕事をしている時などは、つま先立ちやかかとを立てる運動、太腿に力を込めて5秒間そのまま5回のマッスルセッティング(2-(2)-1『下肢の運動』参照)の運動をすることで、同時に気分転換も図れます(この場合、運動に熱中しすぎて勉強や仕事がおろそかにならないよう、あくまでも“こっそり”と)。

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4.定期的に評価して、動機付けをしていく

   地道に続ける運動療法は、目に見えて成果が現れるというものではないために、なかなか自分では評価できません。かかりつけの病院や血友病の包括外来を行っている病院の整形外科およびリハビリテーション科の担当医師、理学療法士による定期的な評価や指導を受けながら進めていくことをお勧めします。そうすることでリハビリをする意欲を維持でき、状況に合った運動療法を進めていけるでしょう。

 

5.関節に負担の少ない運動への挑戦

   安全で高濃度の血液凝固因子製剤の開発により、止血管理が容易になったことから、積極的にスポーツ活動に参加される血友病患者さんが増えています。その一方で、血友病患者さんの中には、進行した血友病性関節症がなくても、主に足に廃用性筋萎縮を起こしている方が多数おられます(廃用性筋萎縮とは、出血を起こしやすい膝や足関節があるほうの足をかばって使わないために、筋肉が痩せてしまう状態のこと)。出血が落ち着いて運動ができるようになったら、少しずつでも構いませんので、腕や足を使うように心掛けましょう。

 

   例えば、出血をきっかけに車で通勤・通学の送り迎えをしてもらっている場合は片道を歩くようにするとか、自動車通勤をしている場合は休みの日に意識して散歩をするようにするなど。また、幼児の場合も出血を恐れて室内遊びばかりさせず、公園で遊ばせる時間を作ってあげたりしましょう。

 

6.靴や装具を上手に利用して

   後述の靴や補装具を利用することによって、関節を支持したり衝撃を和らげたりすることができます。特に靴に関しては、血友病性関節症がない場合でも、足首やかかとにかかる衝撃を和らげるものを選ぶと、散歩や通勤の歩行が楽になる上、疲れにくいので、活動性を高めるには大いに役立ちます。

 

   もともとスポーツが苦手な方は別として、関節に負担が少なく筋力や関節の動きを改善できるスポーツをしてみようとお考えの方には、ウォーキングやスイミングがお勧めです。なかでも以下の理由から、水中ウォーキングは血友病患者さんに最も推奨されるスポーツの一つであると考えられます。

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浮力
水の中に臍の高さまでつかると浮力によって体重は陸上の50%になり、胸までつかると30%、肩までつかると10%になるといわれています。例えば、体重50kgの人が陸上で15cmジャンプすると、足首にかかる荷重は120kgですが、水中なら25kgしかかかりません。
浮力はまた、大きなリラクゼーションが得られることもメリットです。陸上で生活している時は、重力に抵抗して身体を支える抗重力筋が働いているため、真のリラクゼーションは得られませんが、水の中なら無重力に似た状態になるため、リラックスできるというわけです。
抵抗
水は空気の800倍の密度を持つため、身体に加わる抵抗は陸上の場合より大きいのです。速く動かしたりゆっくり動かしたりと、自分の体力に合った負荷が調節できます。

 

水の持つ浮力で関節にかかる負担を軽減し、水の抵抗をうまく活用することで、筋力をつけたり関節の動く範囲を維持・改善したりできる水中ウォーキングは、最も簡単で安全な運動の一つです。

 

参考:暮しと健康 2000年11月号
「水中ウォーキングで腰痛・肩こり・ひざの痛みを解消」 

 

7.スポーツをもっと身近に

   最近では、血友病の方にとってもスポーツは大変身近なものになっています。ここでは一般的に勧められるスポーツ、利点がリスクを上回ると考えられるスポーツ、リスクが大きく勧められないスポーツを紹介しますが、個々の患者さんの病態によって、どのスポーツが適しているか、どのように参加するか、など主治医とよく相談して決めましょう。

 

表血友病患者とスポーツ

 

 

ほとんどの患者さんに勧められるスポーツ

自転車、つり、ゴルフ、ハイキング、ウォーキング、卓球、バドミントン、太極拳、水泳、ダンス、アーチェリー

準備や注意を十分にして参加できるスポーツ(身体的、社会的、心理的なメリットがリスクを上回ると考えられるスポーツ)

野球、バスケットボール、ボーリング、体操、乗馬、アイススケート、マウンテンバイク、ラフティング、ローラーブレード、ローラースケート、ボートこぎ、ジョギング、ランニング、スキー(クロスカントリー)、サッカー、テニス、陸上競技、バレーボール、水上スキー、重量挙げ、フリスビー、ウインドサーフィン

勧められないスポーツ(リスクがメリットを上回ると考えられるスポーツ)

ボクシング、剣道、柔道、相撲、レスリング(身体が直接ぶつかる格闘技)、飛び込み競技、アメリカンフットボール、ホッケー、ラグビー、ラクロス、ラケットボール、モーターバイク、ロッククライミング、器械体操、スノーボード、スケートボード、ゲレンデスキー

 

米国血友病財団・米国赤十字社ガイドライン、1996より一部改変

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